※12月1日追記
国にによる初めての給付奨学金
「返済不要の給付型奨学金の創設に関する自民、公明両党のプロジェクトチームは22日、合同会議を開き、住民税の非課税世帯を対象に、月額3万円を軸に給付することでおおむね一致した。
公明党が求めていた児童養護施設出身者への給付額上乗せについても配慮する方向。両党は今月中にも制度案をまとめ、政府に申し入れる。」
JIJI.comより引用
※12月1日追記
自民、公明両党は11月30日、返す必要がない給付型奨学金について、2018年度から1学年当たり約2万人を対象とし、月3万円を軸に給付することを安倍晋三首相に提言した。17年度は特に学費の負担が重い人に絞って先行実施する。政府は提言を受け、成績基準や財源などを詰める。
Yahoo!ニュースより引用
月3万円を軸
国公立か私立か、学費の違いを配慮して給付額に差を設けるということです。
また、現在公明党は、児童養護施設を退所した人などには、特に配慮が必要だとして、月5万円の給付を主張しています。今後検討される事項となるでしょう。
対象者
国の指針に基づき、各高校が、住民税の非課税世帯である人の中から、学力や部活動の取り組みなどをみて推薦する形です。
全国に高校は5000校以上ありますが、各校から1人以上を割り振ります。
11月30日の自公の提案では、1学年当たり約2万人を対象とすることが提言されました。
実施日
本格的な実施は、2018年度です。
しかし、2017年度から特に学費負担が重い人にしぼって、先行導入することが予定されています。
課題となるもの
対象者が狭い
おおむね、給付型の奨学金は条件が厳しいものですが、国による給付奨学金の対象は「非課税世帯」に限定されています。
非課税世帯とは、生活保護を受けている世帯や給与所得が200万円以下の世帯になります。
1.生活保護を受けている
2.未成年者、障がい者、寡婦、寡夫で前年の合計所得金額が125万円以下(ただし、給与所得者は204万4,000円未満)
3.前年の合計所得金額が各地方自治体の定める額以下(東京23区では扶養なしの場合35万円。扶養がある場合は35万円×本人・扶養者・控除対象配偶者の合計数+21万円)、給与所得が約200万円以下の世帯
各高校から1人以上の枠があることから、ここにあてはまる人にとっては可能性が高くありがたい制度になることでしょう。
しかし、現実的には非課税世帯で大学進学を希望している人は、数少ないです。
月3万円給付の奨学金があったとしても、そこまで希望者が増えるとは考えにくいのではないでしょうか?なぜなら、月3万円では非課税世帯者にとっては大学に行くのには足りないからです。
特に、地方に住む人にとっては、大学進学をするにあたり寮や一人暮らしをすることも多いことから、例え3万円給付があっても厳しいものとなるでしょう。
公明党が主張するのは、児童養護施設出身者は月3万円では足りないから5万円を…ということで、これについてはいい主張だと思います。財源の確保という大きな問題があることですが、対象者の幅をもう少し広げられれば…と思う次第です。
給付とはいっても、月3万
給付型奨学金は、月3万、年間にして36万円です。
これは、大学の授業料のどのくらいをまかなえると思いますか?
入学金 | 授業料 | 施設管理費 | 合計 | |
私立大学 | 261,089 | 864,384 | 186,171 | 1,311,644 |
国立大学 | 282,000 | 535,800 | 817,800 |
もちろん給付ですので、奨学金のみで学費の全額をまかなえるわけがないのですが、月3万円では、1年間の授業料の半分にも満たない金額なのです。
授業料が安いと言われている国立大学も、最近は授業料があがってきており私立大学とそこまで大きな差があるわけではありません。
ですから、大学に行くためには、アルバイトやその他の奨学金との併用、親の支援が不可欠になりますが、非課税世帯の場合は親の支援は期待できないことが多いはずです。
他の奨学金と併用をした場合は、多くは貸与型の奨学金となるでしょう。
月5万円借りると、給付型と合わせて年間96万になるので、学費がまかなえるようになります。生活費はアルバイトをするとして、だいぶ現実的になりますね。
しかし、月5万円借りると4年間で240万円の借金ができるということは忘れてはいけません。
また大学の授業料は、前期後期と2回に分けて払うことがほとんどですから、まとまった金額を用意する必要があります。
奨学金が返せない人たち
学力があるものの学費が払えないという理由で、大学進学をあきらめるのは残念なことなので、もっと教育環境がよくなってほしいですね。
貸与型の奨学金については、借りた人の苦境が、しばしばニュース番組や特番で取り上げられています。
奨学金とはいっても、有利子のものは負担も大きくなりますし、無利子でも額が大きいので返せなくなってしまう人がたくさんいるのです。
例えば、月に8万円借りたとして、4年間で約400万円になります。
希望を胸に社会に出た途端、400万円の借金が重くのしかかる現実は、社会人になりたての若者にはきついものでしょう。
もちろん全額いっぺんに返すわけではありません。
例えば、400万借りたとしたら、おおよそ月2万ずつを20年ほどかけて返済することになります。
「月々2万なら…」と最初は思うかもしれません。
しかしそれは、返せる人の言い分です。
誰もが20年間安定して暮らしていける保証など、どこにもないのです。
一度躓いたら、月2万の借金がどんどんたまっていきます。奨学金であっても、3ヵ月滞納をすると金融事故情報として載ってしまいます。
そうなると、クレジットカードが作れなくなったりローンが組めなくなったりするため、消費者金融やカードローンを利用しはじめる人もいます。奨学金を返済するために、借金を重ねる…まさに自転車操業です。
「月々たかだが●●円を甘く見ないこと…」
一度苦しくなると、立て直すのが大変で「月2万」どころではすまなくなってしまいます。
奨学金を返済できず、任意整理を考える人、配偶者に秘密にしながら返済を続ける人など、奨学金返済で苦しんでいる人はたくさんいますので、今回給付型の奨学金を利用しようと思っている人にも、大学生活全体でかかる費用をしっかりと計算し、親の援助と給付のみでやっていけるのかどうかを考えて欲しいと思います。
今後に期待!
まだまだ課題が多いものの、いい動きです。どんどん教育環境が整って、意欲ある若者が学びやすい環境になって欲しいと思います。
先日は、文部科学省が、大学進学者に貸し出す無利子の奨学金について、来年度から世帯年収や成績基準を満たした希望者全員に貸し出す方針を固めたというニュースもあり、大学進学者にとって嬉しい動きになってきました。
私自身も奨学金を借りて、大学に行くことができましたので、これらの制度がどのようなものになっていくかこれから注目していきたいと思います。
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