基礎知識

銀行カードローンってどうなるの?問題点と今後の展望について。

平成29年4月29日の日経新聞などに、銀行がカードローンの融資を抑制するという記事が載っていました。

過度の融資が多重債務者を増やしているためです。

銀行はこの批判に応えるようですが、総量規制がなく人気が高い銀行カードローンに大きな転機が訪れています。

銀行カードローンは、ちょっとやり過ぎ?

銀行系カードローンは、消費者金融より大きな限度額のカードローンとして人気があります。審査基準は公表されていませんが、一般的に年収の半分が一つの目安です。銀行によっては、はっきりとこの基準を明示していることもあります。

しかし、消費者金融が年収の3分の1に制限されているのに対し、明らかに優遇されています。昔、消費者金融は貸し過ぎにより、多くの顧客を自己破産に追い込んだ歴史があります。そのため、現在のような融資制限が定められました。俗にいう「総量規制」のことです。

現在の銀行にそのような制限がないのは、貸し過ぎによる問題が生じていなかったためです。

しかし、銀行系カードローンでも同じ問題が生じようとしています。ちょっとやり過ぎではないかと言われているのです。

最大1千万は大きすぎるのでは?

みずほ銀行カードローンの融資限度額は最大1,000万です。住信SBIネット銀行は最大1,200万になるケースもあります。これだけ大きなカードローンは現実的ではありません。もともとカードローンは少額の借入をする際、その都度審査をしなくて済むことがメリットなのです。

しかし、限度額が高ければ金利が下がる「ローンの常識」はカードローンにも適用されます。信用力に自信がある人が高い限度額カードローンを要求しているのです。

とはいえ、カードローンは自分の都合のいいタイミングで借りることができます。便利な反面、借りっぱなしになる危険性もあります。100万円単位のカードローンを利用して、返済に窮する人が現実にいるのです。

事実上青天井

先ほど年収の2分の1が目安だと述べました。

しかし、実際には年収の2倍にもなる限度額を設定されていた人もいらっしゃるようです。平成29年4月29日の日経には、年収220万円の人に500万円を貸していた事例があったと載っていました。

ひょっとしたら、何らかの事情で年収が下がったのかもしれません。

しかし、銀行は長年の得意先を大切にする傾向にあります。年収が低くても、古くから取引があれば「万が一の際にも回収可能」と判断した可能性は否定できません。

消費者金融ではこのようなことは間違ってもありません。融資制限があるだけではなく、基本的に申込者は「新規顧客」です。一度解約した後、再度申込む人はほとんどいません。

銀行系カードローンは、消費者金融以上に過大な限度額を設定する要因があったのです。

信金の「きゃっする」はどうなるか?

銀行ではありませんが、信用金庫のカードローンに「きゃっする」という商品があります。信用金庫によって差はありますが、その差は金利と限度額程度でしょう。最大融資限度額は900万円とみずほ銀行に迫る大型カードローンです。

では、こんなに高額な限度額を設定される人はいるのでしょうか。

信用金庫は「地域密着型」の経営をしています。親が預金を作っていれば、子供も自然と同じ信用金庫で預金を作ることが少なくありません。メガバンクではあり得ない戸別訪問が生きている金融機関なのです。

そこまで「密接」なお付き合いがあれば、カードローンの限度額がどうなるかは言うまでないでしょう。有村架純さんを前面に出した広告で勢力を伸ばしている「きゃっする」ですが、今後の動向に要注目です。

簡単な審査ではないはずですが…

銀行ローンの審査は厳しいことで有名です。「石橋をたたき壊して渡らない」とまで言われる銀行融資の審査は、住宅ローンを借りた経験がある人ならわかるでしょう。

しかし、そんな銀行がどうしてカードローンだけは審査が緩くなるのでしょうか。ちょっと考えていただければわかっていただけると思いますが、カードローンはリスクが高い融資商品です。

マイカーローンなどのローン商品は、契約後は返済一辺倒になります。これに対し、カードローンは自由に追加借入ができますから、利用残高は限度額付近で固定化されがちです。

ただ、金利を高く設定できることは、収益を重視せざるを得ない銀行にとって「禁断の果実」です。審査を緩めても妥当する「おいしいローン商品」であるとは間違いありません。

年収の2分の1は多すぎるのか

ところで、年収の2分の1という限度額は妥当なのでしょうか。ここでいう年収とは、税金や社会保険料を引く前の数字です。これらを控除した手取りベースの給料は、この8割程度に目減りします。

すると、年収の2分の1とはいえ、手取り年収をベースにすれば6割程度の限度額です。ボーナスもあるので一概に言えませんが、1年で完済しようとすれば手取収入の半分以上を毎月返済する必要があります。利息も入れれば7割に迫るでしょう。必ずしも限度額いっぱい借りるとは限らないかもしれません。

しかし、その気になれば借りることができるのがカードローンです。年収の2分の1という限度額は多すぎるのではないでしょうか。更に言えば、2倍という数字は非現実的です。

付き合いで緩む銀行の審査

先ほど銀行は長年の得意先を大切にすると述べました。融資審査の際には、このような顧客を「支援する」という名目で審査を緩めにすることがあります

外部には公表されない「稟議書」では、このような提案がされることもあります。当然融資限度額は高めに設定され、金利は下がり、顧客は満足するわけです。

しかし、カードローンの利用は任意であり、借入は自由自在にできます。借りられてしまったら歯止めは効きません。

審査をしているのは消費者金融

銀行系カードローンの商品説明書を見ると保証会社として消費者金融や信販会社が指定されています。保証会社に審査を任せることで、万が一貸金回収が滞ったら債権を保証会社に移管することができるのです。

銀行は担保を取る融資審査を得意としています。これに対し、無担保融資を得意とするのは消費者金融や信販会社です。

銀行系カードローンは、もともと消費者金融などに審査をしてもらう事が前提になっています。言い方を変えれば、銀行はほぼノーリスクで貸付をしているのです。

厳格化する審査

とはいえ、これだけ問題化すると銀行も対応せざるを得ません。冒頭に述べた、消費者金融の轍を踏みたくはないからです。総量規制を適用される前に自主規制で逃げ切りたいのが銀行の本音と言えます。

全銀協の小山田会長も5月18日の会見で「顧客ごとの返済能力などを踏まえて慎重に判断していく必要がある。各行の自律的な取り組みを喚起する」と述べています。

安倍総理も、銀行に総量規制がないのは社会的責任があるからだと述べています。このままでは、本当に貸金業法同様の総量規制を課せられてしまいかねない現状です。

全銀協の自主規制

全銀協では自主規制を検討したようです。しかし、先ほどの小山田会長の会見にあるとおり、全銀協として自主規制をするつもりはないと考えられます。

ただ、メガバンクでは広告の抑制や年収確認書類の提示範囲拡大といった対応を始めています。みずほ銀行は融資上限を年収の半分から3分の1に引き下げました。全銀協としての統一行動ではないとしても、少しずつ変わりつつあることは確かです。

総量規制並みになるか?

審査の常識からすれば、年収に比べて高い融資限度額を認める人は信用力がある人です。そのような人は貸倒になる可能性は高くありません。

先ほど挙げた年収の倍の貸付をした事例も、現実にはレアケースです。今回の問題は弁護士会でも意識されており、債務整理を専門とする弁護士から一つのケースとして提示されたものに過ぎません。

多くの方は「低金利」に興味があり、利用限度額の大きさには興味を持っていません。要するに1千万円のみずほ銀行カードローンを契約していても、実際に借りている金額は1万円単位なのです。

良くも悪くも「発信力」があるメガバンクの自主規制などが功を奏せば、消費者金融のような総量規制対象にはなりません

金利はどうなるか?

では、気になる金利はどうなるでしょうか。

ここで参考になるのがアイフルのプレミアムカードローンです。融資限度額は最低100万円から最高500万円までですが、信用力があると判断されれば金利は4.5%です。似たようなカードローンが信用金庫などにも散見されます。

高い限度額のカードローンはインパクトがあります。そのため、限度額引き上げ競争が起きたのです。限度額を上げるとともに、金利も下がるため信用力があるサラリーマンが飛びついたのです。

このような方はカードローンで高額の借入をしようとは考えていません。低金利のカードローンが欲しいだけなのです。今後、高い融資限度額のカードローンがなくなっても、低金利カードローンはなくなりません。ただし、審査は今までより厳しくなるはずです。

変わるメガバンク

銀行系カードローンを牽引してきたのはメガバンクです。阿部寛さんなどのタレントを投入して大々的な広告合戦を繰り広げてきました。

しかし、そのCMも自粛の方向にあります。メガバンクのカードローンは大きな曲がり角に差し掛かっています。

三井住友銀行は年収確認書類が必要

カードローンで一番規模が大きいのは三井住友銀行です。銀行本体だけではなく、傘下に消費者金融のプロミスとSMBCモビットを持っています。大手と呼ばれる消費者金融の4社のうち半分がSMBCグループなのです。

今回の問題に対して最初に対応したのは三井住友銀行です。今まで300万円までの借入であれば年収確認書類は不要でした。しかし、4月から50万円を超える借入に年収確認書類が必要になりました。

ほとんどの方は必要なかったはずですが、今度は逆にほとんどの方が年収確認書類の提出が必要になったわけです。審査現場の方々は仕事がいきなり増えて大変だったはずです。

他行も追随の見込

この傾向は他のメガバンクにも波及しています。

三菱UFJ銀行とみずほ銀行も6月から同様に50万円を超える借入に年収確認書類を要求することになりました。今まで200万円を超えなければ必要なかったので、大きな変化です。

メガバンクに口座を持っている人の中には、今年に入ってからカードローンのDMが多くなったと思った方もいらっしゃるでしょう。

「規制強化」を見越して、営業を強化しているのです。

年収証明書が事実上不要で、かつ年収の半分まで借りることができるというメリットがなくなるため、営業攻勢に出たと思われます。

総量規制並みに収束か?

では、最終的に融資限度額はどうなるのでしょうか。日経の記事からは消費者金融の「年収の3分の1」が相当意識されているようです。つまり事実上の自主規制として、総量規制並みに収束すると考えるのが妥当と言えます。

このような変化に対し被害を受けるのは、年収の半分という高い限度額を頼っている人でしょう。消費者金融の総量規制も、平成18年の施行からしばらく猶予期間があり、最終的に現在の形になりました。次第に追い詰められた人たちがヤミ金に手を出し、今度はヤミ金被害が社会問題になりました。

銀行系カードローンの利用者も年収確認書類の提出を求められ、限度額を下げられる可能性があります。つまり、限度いっぱい借りている人は、何年かの間に年収の半分から3分の1に圧縮しなければいけないのです。

現在、銀行系カードローンを利用している人は要注意だと言えます。

これからどうすればいいのか

では、今後はどのようにすればいいのでしょうか。

カードローンは先ほど述べた通り少額の借入を前提としたローンです。
給料日前に1万円単位で借りたり、クレジットカードの残高不足に対し10万円程度借りたりした経験がある人もいらっしゃるでしょう。

これ以上の100万円単位のローンは、個別に申込をして借りるのが本来の姿です。
もちろん、そのほうが金利は低いし返済計画も立てやすいと言えます。
俗に「大型」カードローンと言われるカードローンは本来不要だということは知っておくべきではないでしょうか。

少額の借入なら影響なし

とはいえ、少額の借入はカードローンが一番好都合であることは間違いありません。現在でも、限度額が10万円単位で普通預金の残高不足をバックアップするローンは大人気です。普通預金残高をマイナスにする形で借りるローンですから、事実上のカードローンと言えます。

このような形式のローンや限度額が100万円程度のカードローンなら、今回の問題から影響を受けることはありません。つまりカードローンとして、実際に利用価値があるローン商品には影響がないのです。

むしろ、マイカーローンのような金利引き下げ競争が予想されますから、信用力が高ければ有利になると言えます。

多額の融資はフリーローンへ

では、100万円単位のカードローンを利用していた人はどうすればいいのでしょうか。

モノは考えようで、いい機会と捉え、まずカードローン残高の圧縮をすることをお勧めします。先ほど述べたように、事実上の年収規制が予想されますから、否応なしに対応を迫られます。いきなり返済しろと迫られてもなかなか対応できません。早めのスタートをお勧めします。

そして、高額融資はフリーローンを利用するのです。メガバンクに限らず、多くの地銀は時間外窓口を設置しています。会社帰りや土日にも銀行で融資の申込は可能です。

お金を借りる際には返済計画が不可欠です。適正な範囲の借入かどうかは、返済額で決まります。返済額が一定額であるフリーローンは返済に困ることが少ないのです。

自分の取引銀行が有利なことは変わらない

とはいえ、銀行融資の審査が変わることはありません。審査基準は変わるかもしれませんが、根本的な考え方は一緒なのです。

先ほど述べたように銀行は長年の取引先を大切にします。この方針は絶対に変わりません。現在、東芝の経営悪化が問題になっています。しかし、メインバンクの三井住友銀行は「支える」と言っています。準メインバンクの三菱東京UFJが行内の格付けを「要管理債権」に下げたのとは対照的です。

これが銀行の「長年の取引先」に対する対応なのです。会社だけではなく、個人であってもこの対応に変わりはありません。

現在取引をしている銀行との「取引履歴」は自分の財産です。カードローンを借りれないから解約しようなどとは思わない方が賢明でしょう。

まとめ

今回の問題提起でカードローンの審査も申込手続も簡単ではなくなるでしょう。大口限度額を狙う人には大きな痛手になるはずです。

しかし、本来の目的である小口融資に限って言えば、何も変わることはありません。もともとカードローンは小口で短期的な借入を目的とした融資なのです。

普通預金残高をバックアップしてくれる、限度額10万円単位のカードローンに助けられたことがある人は少なくないはずです。そのようなカードローンには影響はありません。ご安心ください。

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